まず、想像してみてください。実家を離れて数年が経った、自分の実家のこと。田んぼにかこまれた風景。そこにいる親は、元気に農業をしているかどうか。元気でいるなら、自分の親の年齢を考えてみてください。
2011年の農林水産省の発表によると、日本の65歳以上の農業人口は全農業人口の6割以上を占めています。「自分の親はいつまで農業をやっていくのだろう。今はいいけどそろそろ歳だし、いつかはいなくなってしまう……。もしそうなったら、実家に残る農機具はどうすればよいのか?」と思っている方、必見です。
今日は、不要になった農機具を売りたい人に向けて、売れるコツをまとめてみました。
高齢化社会の問題は農業にも影響がでています
冒頭にも述べましたが農林水産省の発表によると、2011年の農業人口のうち、65歳以上の農業人口は6割を超えています。この農業の高齢化自体は、「後継者不足」によるものとして1970年ごろから問題視されてきましたが、最近ではこれにあわせて「高齢者の農作業中の事故」という問題が発生しているのです。
農家には「重労働」などのイメージがあることから、最近では農業に就きたいと考える若者たちが減少しており、「後継者不足」も、こうした若者の農家離れが原因といわれています。また、都心部で働いたほうが収入面で安定していることもあり、実家が農家であっても、後を継がずに出て行ってしまう人も増えているのです。
さらに、新規で農業をはじめようとする場合、農機具の購入や土地の確保といったことから、初期費用は莫大です。これに加え初年度から売り上げがたつことはまずなく、ここまでして農業一本でやっていく意味を見出すことができないのでしょう。
こうして農業現場にいる若手と呼ばれる人が減り、親世代が残ると、作業中の事故の増加へと繋がっていきます。
農林水産省によると平成15年から平成17年の3か年のうち、農作業中の事故数は402件であり、そのうちの7割が65歳以上だといいます。また実にその7割が農機具での作業中によるものです。事故に繋がった農機具の内訳は、多い順にトラクターが46.0%、耕うん機が15.1%、田植え機など運搬車が14.7%となっています。
農機具は、機械の力を借りて簡単に農作業がおこなえる反面、とても危険な道具でもあります。特に「人」が関わるところでは、疲労や焦りが出てしまったり、安全軽視や手順を間違えたりすることなどもあるため、事故に繋がりやすいものです。
そして、こうした農機具の事故は、使用者が高齢になればなるほど発生のリスクが高まります。高齢者は体力や視力などの能力が低下しているからです。高齢化社会の問題は、「後継者不足」の側面からはもちろんのこと、「農機具事故の増加」などの側面でも、農業に影響を与えているといえるでしょう。
農業で使う農機具たち
実家を離れて都心部にあなたが出てきたのなら、自分の親や祖父母が農機具を乗り回し田んぼを悠々と歩いていた記憶を今、振り返ってみてください。農業で使われる機械には、こんなものがありましたよね。
トラクター
トラクターの存在は一言でいうならば、「田んぼ仕事は、こいつがなければ、はじまらない。」でしょう。田んぼ仕事には最低限必要だと考える人が多い機械です。
トラクターの主な仕事は、「モノを運ぶ」ことです。トラクターは人が運べない大量の収穫物や、肥料、雑草を運び出します。このほかトラクターはアタッチメントと呼ばれる先端に取りつける部品を変更することで、田んぼの水面を均平(きんへい)にしたり、畝(うね)をつくりあげることができ、田んぼ仕事には欠かすことができません。
田んぼは水面を均平にすることで、苗につかる水が多すぎて水没したり、少なすぎて生育に影響が出たりすることを防ぐことができます。
耕うん機
耕うん機の存在は一言でいうなら「畑なら、こいつが、まず必要」という道具です。田んぼ仕事にトラクターが必要なら、耕うん機は畑で必要となる農機具だといえます。
耕うん機が発明される前は、畑仕事は犂(すき)や鍬(くわ)といった農具を用いて手作業でおこなわれてきました。耕うんとは畑の土を耕し、作物に適した土をつくりだすものです。耕うん機が誕生したことで、そうした仕事も機械の力で簡単におこなうことができるようになりました。
現在では家庭菜園でも使えるようなガスボンベで動く耕うん機も登場しています。
草刈り機
草刈り機は「草を刈る」ことを目的として誕生しています。草刈り機の動力源は充電式、電動式、エンジン式といったのがあり使用場所によって使い分けることが大切です。
たとえば、電動式、充電式はパワーこそエンジン式に劣るものの、自宅など音を気にする場面では最適となります。一方エンジン式は音が大きいのですが、その分パワーがあるので、周囲を気にしなくていい場所であれば最適です。
コンバイン
コンバインは田んぼで使われることが多い道具です。収穫・脱穀・識別がメインの仕事となります。
これを手作業でしようと思うと、カマでの収穫、そして千歯扱きを用いて脱穀といくつもの工程を重ねることになります。考えると、骨が折れてしまいそうです。
田植え機
田植え機は読んで字のごとく「田植えをする」機械です。
田植え機は大きく2種類あり、小さな田んぼに便利な「歩行型」、大きめの田んぼに植えるときは、「乗用型」が利用されます。田植え機は他の農機具と比べて自動化されたものがもっとも遅く、新しい農機具です。
農機具は故障していても売れます
「農機具を売却したい」とはいっても、実家にある農機具って本当に動くのだろうか?古すぎてどこか壊れて動かないのではないだろうか……と思っていませんか?
農機具は通常の乗用車などと違い、速度や快適性よりも、業務に適した形へ進化を遂げてきました。つまり、何よりも耐久性や頑丈性を重んじて作られているのです。
耐久性や頑丈性を重視されていた経緯があるため、実家に眠る農機具も動く可能性が高いでしょう。
売れる理由
農機具は頻繁に買い替えるということは考えにくく、先代が使っていたものを利用したり、買い替えといっても新品を買うというよりは、中古を買ったりすることが多いです。
また、農機具は故障していても売れるのです。その理由は主に国内に向けた中古販売より、東南アジアをはじめとする「海外に向けた」販売業者が買い取ることがあるためです。
さらに、消耗品などのパーツをとるために買い取ってもらえることもあります。型落ちであっても海外市場やパーツ取りという理由で、高く売ることができます。
売るための注意点
もしかしたら、自分の住んでいた実家の農村には、農機具の売却などについて独特のルールのようなものがあるかもしれないですね。自分の祖父母の代から大変お世話になっている農機具の中古販売者さんに売るのが、その農村での慣例となっていることも考えられます。
人づきあいで選んだ業者をとるのか、より高値で買い取ってくれる業者をとるのか、非常に難しいことを天秤にかけることになりそうです。そうならないためにも農機具を売却する際には、家族および親族にきちんと合意を取ってからおこなうことが重要となってくるでしょう。
農機具を少しでも高く買い取ってもらうには?
農機具を売ると決まったら、なにをしたらいいの?どうしたらいいの?ということがあると思います。そこで農機具を少しでも高額で売るために、気をつけておきたいことをご紹介しましょう。
エンジン
農機具のエンジンは、機械にとってコアとなる大事な部分です。農機具を売却する際にエンジンが動かなかったりすると、査定額が一気に下がってしまうこともあるでしょう。高額売却を目指すのであれば、きちんとエンジンのお手入れをしておく必要があります。
動かさない場合でも、定期的なメンテナンスの一環として、こまめにエンジンをかけてみましょう。目安は3カ月に1回です。
保管場所
燃料タンクに水が入ってサビが発生していると、売る際の評価に影響が出ます。こうならないためにも、農機具はできるだけ屋内に保管し、サビや劣化の防止を心がけていきたいですね。
このほか、定期的に農機具の外観や足場まわりの泥落としをおこない、見かけをキレイにしておくとよいでしょう。
まとめ
買取業者によって得意とする農機具に違いがあったり、評価する基準や観点が違ったりするので、農機具の売却をおこなう場合は、業者の比較することが重要になってくるでしょう。
もし実家に農機具が眠っているなら、一度売ることも考えみてはいかがでしょうか。
農機具の買取は、海外でも需要が高まっています。また、日本にも若手で農業をはじめようという志をもった人もいます。そういった若手へ、農業を続けてもらうために、農機具を譲ることも考えられます。
その際は、家族や親族にきちんと確認をとり、先代の人間関係なども考慮した上で、トラブルなく売ることや譲ることを考えていきましょう。