米作りは、1年を通してさまざまな作業を経ておこなわれます。イネを植える前に田んぼの土を整え、水を引くなどの準備をする必要があります。そのなかでも、しっかりと取り組むことで米の成長を助けることができるのが”代掻き”という作業です。
米作りを始めたばかりだと、代掻きと聞いて「どのような作業なのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。また、「代掻きの経験はあるものの、コツがつかめない」という方のためにも、今回は代掻きのコツと、そもそも代掻きがどんな作業なのかについて解説していきます。
目次
まずは代掻きの基礎情報をおさらい!
代掻きのコツを説明する前に、まずは何のためにする作業なのかを確認しておきましょう。作業の目的を正しく理解することで、より効果を意識して取り組むことができるはずです。この章では代掻きの目的をおさらいします。
代掻きとは、土壌をかき混ぜる作業
代掻きをおこなうのは5月、田起こしで田んぼを耕した後の、田植え前の時期です。田起こしで耕した田んぼは、まだ水が張られておらず、耕した土もまだ粗く、混ざっていません。この状態だと、そのまま水を引いて田植えをしても効率よくイネが育たないのです。
そこで田植えの前に水を引きながら土壌をかき混ぜ、田んぼの表面を平らにします。これが代掻きです。田んぼはこの代搔きをすることで、ようやく田植えをする準備が整ったといえるのです。
代掻きの目的
代掻きは、田んぼの土を細かく砕き、柔らかくし、さらに平らにすることで、水を張った後の水位を均一にします。土を柔らかくすることで田植えが楽になり、イネの成長もよくなります。また、田んぼの土壌が均一に水に浸かれば、イネの生育にムラが出ません。
さらに、土をかき混ぜることにより肥料を行きわたらせ、雑草の根や種子を地中深くに埋め込むことができるので、イネだけが育ちやすい環境を整えることができます。代掻きするときは、トラクターで1度、土手の付近などを通っておくと、虫やモグラが作った穴を塞ぐことができ、水田の維持にも効果的です。
このように、代掻きをすることによって、お米の生産効率を上げることができます。設備があればだれでもすることができる作業ですので、初めてでも挑戦してみましょう。
代掻きをトラクターでおこなう方法は2種類
代掻きは古くは手作業でおこなわれてきました。そのため現代でも手作業でおこなうことがあります。しかし水田の面積が広い場合は、とても骨の折れる作業になってしまうでしょう。そのため代掻きはトラクターなどを使って機械でおこなうことが一般的です。
トラクターでの代掻きには2つの方法があります。特殊な道具を使うか使わないかの違いなので、自分の水田や設備に合ったやり方を選んでみてください。
「ロータリー」のメリット・デメリット
ロータリーとは、トラクターの先端に接続されている、田畑を耕す部分のことです。ロータリーは一般的なトラクターには標準的に備え付けられています。この部分を応用すると、土を砕くことができるため、代掻きに利用することが可能です。
・ロータリーを使用するメリット
代掻きにロータリーを使用するメリットは、追加でアタッチメントを購入しなくても、トラクターさえあれば、すぐに作業に取り掛かれる点です。ロータリーは多くの場合、トラクターの標準装備として搭載されています。費用面で優れているため、初めて代掻きをする場合は、まずこのロータリーを試してみることで要領をつかむとよいでしょう。
・ロータリーを使用するデメリット
ロータリーは、土を撹拌(かくはん)する能力にたけていないため、下に解説している「ドライブハロー」と比較すると、代掻きの機能において劣ります。また、ロータリーを使って綺麗に代掻きするには、コツをつかむ必要があります。ロータリーを用いて作業をした後には凹凸が残ることがあるので、そのときにはアルミレーキを使って手作業で修正することが必要です。
「ドライブハロー」のメリット・デメリット
代掻きには、専用の作業機であるドライブハローを使う方法もあります。ドライブハローは、トラクターに取り付けることで使用できます。
・ドライブハローのメリット
ドライブハローは代掻き専用の機器です。そのため、土の塊をより細かく砕き、土を混ぜ込むことができます。土をならすこともできるので、凹凸の少ない平らな土壌を作ることができ、手作業で修正する手間もはぶけるのがメリットです。
・ドライブハローのデメリット
ドライブハローはトラクターの標準装備ではないため、導入するためには追加費用がかかってしまうというのがデメリットです。ドライブハローは土を耕すことに応用することもできますが、基本的には代掻きのための機械なので、必要のないときはしまっておくことになります。費用に対して、活躍が少ないのです。
面積の広い水田の場合は、ドライブハローが仕上がりもよく、効果的ですが、小さな田んぼの場合はロータリーで十分だといえます。
代掻きのコツはずばりこれ!
代掻きをする前におこなう”田起こし”の段階で、少し工夫をしておくと、さらに効果的に代掻きをおこなうことができます。それでは田起こしのコツと代掻きのコツをあわせて見ていきましょう。
代掻き前の田起こしのコツ
田起こしは、水を引く前に田んぼの土を乾燥させ、掘り起こしたり反転させたりして耕す作業のことで、“耕起(こうき)”ともいいます。収穫を終え冬を越した後に、固くなった水田の土を掘り起こし、サラサラな土にすることで、水田に理想的な泥の元を作ります。
田起こしは代掻きに直接かかわる大切な工程です。以下のことを注意しましょう。
・田んぼが乾いた晴れの日におこなう
雨の日におこなうと、田んぼがぬかるんでいます。田起こしは土を、サラサラの粒が細かい状態に仕上げ、水を張ったときに泥が形成されるようにおこなう作業です。そのため、土壌が乾燥している日を選んでおこなうようにしましょう。
・耕す深さもひと工夫
耕す深さを耕深(こうしん)といいますが、耕深をあえて深すぎない10~15cm程度にとどめるとよいでしょう。こうすることで、代掻きや田植えが楽になります。深すぎると歩きにくくなったり、トラクターが車輪を取られて立ち往生してしまうこともあります。深すぎず、作業のしやすい耕深を目指せば、その後の作業が楽で安全になるでしょう。
代掻きのコツ
田起こしができ、水源の確保ができたら、いよいよ代掻きです。この作業は水の量とトラクターの動かし方を意識しておこないましょう。
・田植え2~3日前におこなう
代掻きは田植えとセットでおこなう作業です。田植えができる2~3日前におこなえるように準備しましょう。田植えまでが長くかかると雑草が生えることがあります。天気に注意しながらタイミングを見計らっておこないましょう。
・土を練りすぎない
土を柔らかくし泥を作ることは代掻きの目的の1つです。しかしあまり深くまで泥の層を作ってしまうと、酸素が充分に行き渡らなくなります。表面は泥の層ができ、その下は土の塊が残る程度を目指しましょう。
・注意!代掻き後の水は流さない
代掻き後の水には肥料が溶け込んでいます。溶け込んだ肥料は環境汚染の原因になるので、代掻き後の濁り水は絶対に流さないようにしましょう。
・代掻きは浅い水で
代掻き後の濁り水を流さないためにも、代掻きは浅い水位でおこないましょう。荒代(あらしろ)と呼ばれる最初の代掻きは、土壌の8割が水の上に出た状態でおこない、その後1~2cmの水位で本代掻きをおこないます。
・トラクターの使い方
代掻きとき、トラクターは縦横に直線状に動かすようにしましょう。こうすることにより、水を張ったときの水持ちがよくなります。また、一筆書きを意識して、ゆっくりとした速度で進みましょう。速度の目安は、歩きよりも少し遅い程度です。
また、深さを均一に保つように意識することも重要です。水田のなかに島ができてしまうと、そこにはイネが育ちません。特に折り返しで旋回するときは早めに旋回するようにし、畦(あぜ)の周りを最後に通るようにすると、畦の付近に土が溜まってしまうのを防ぐことができます。
トラクターのメンテナンスも忘れずに!
水にぬれた泥のなかを走行しなければならない代掻きは、機械類に特に負担を掛ける作業です。代掻きによって高価な農耕機械であるトラクターが壊れてしまわないように、きちんとしたメンテナンスをおこなうことが大切になってきます。
日常的におこなう点検
日常的なメンテナンスは、トラクターを長く使う上でやっておくに越したことはありません。愛着もわくので、ぜひ日常点検を始めてみてください。
・オイル・ラジエーター冷却水・バッテリー液量の点検
トラクターの液体系の残量は、車を点検するときのように、常に気をつけておきましょう。ラジエーターは、冷却水の水位が下がるとオーバーヒートの原因になります。また、液量だけでなくフィルターの目詰まりも点検しましょう。
・タイヤ・ボルトナットの緩み・ファンベルト点検
タイヤの空気圧は年に1回程度チェックしましょう。またボルトナットは緩んでいたらすぐに締め直すようにしてください。冷却装置の送風機に動力を伝えるファンベルトは、緩んでいるとエンジンの効率が悪くなってしまうので、必要あれば交換しましょう。
・汚れの洗浄
汚れは高圧洗浄機などでこまめに落としましょう。こうすることで錆びを防いだり、汚れに隠れた破損を発見したりすることができます。汚れを落として必要な部分に油をさせば、洗浄は終了です。
定期的におこなう点検
上記の点検とあわせて、以下に挙げる項目は定期的に点検をおこないましょう。点検する箇所によって定期メンテナンスをおこなう周期が違います。うっかり長期間点検せずにいると、思わぬ故障に繋がりますので、日常的な点検の際にも意識するようにしてください。
・オイルの交換
エンジンオイルは100時間の稼働に対して1回のペースで交換し、もし黒く汚れていたら汚れを発見した時点で交換してください。また、ギアオイルは初めてトラクターを使用するときは50時間おきに、その後は300時間おきに油をさし直すようにしましょう。
・ラジエーター水の交換
ラジエーター水は年に1回の交換を目安にしてください。ラジエーター水は通常の水道水ではなく、不凍液(ふとうえき)を使用します。冷却能力の維持のために忘れないように入れ替えましょう。
トラクターの付属品が壊れたら買取業者で高く売ろう!
トラクターは用途によってさまざまな付属品を付けて動かすことができます。前章で紹介した「ドライブハロー」や「ロータリー」がこの付属品です。もし付属品が破損してしまった場合や、いらなくなってしまった場合は、買取業者に買い取ってもらうことができます。
買取業者に依頼するメリット
最大のメリットは、処分するためにお金がかかるどころか、売却して現金が手に入るという点です。買取業者に頼むことで、今ある機材を売却したお金を元手にして、次に必要な機材を購入することができ、経済的です。
また複数の業者の査定を受ければ、よりお得にトラクターを売却することができます。農具を手放す場合は、買取業者の利用を検討してみるのもよいでしょう。
買取価格を上げるには業者選びが重要!
買い取りを依頼するときには、なるべく複数社から相見積りをとるようにしましょう。これにより、より高い査定を出してくれる業者を選ぶができます。
しかし、そうはいっても業者選びには手間がかかるものです。そこで、見積りを一括比較できるサイトを利用すれば、業者ごとに見積りを依頼する手間をはぶくことができます。農具を売るときは、比較サイトから届いた査定結果をじっくり検討し、納得できる業者と取引をするようにしましょう。
まとめ
今回は代掻きのコツについて解説しました。代掻きはお米を育てていく上での登竜門的な作業です。今回ご紹介したコツを通じて、効率的な稲作ができるようになっていただければ幸いです。
農作業をするときには、その作業の意味に立ち返るようにしましょう。例えば田起こしは、水田に最適な土壌を作るために、土をサラサラにほぐす作業です。また代掻きには、土の塊を砕くという目的以外にも、雑草の種を地中に埋め込み、発芽させないという目的も含まれています。作業の持つ意味を意識して、最高の水田に仕上げるイメージで臨んでください。
また、不要になったトラクターの付属品は業者に買取を依頼することができます。壊れていても値段がつく場合があるので、まずは査定を受けてみることをおすすめします。