食料自給率が低下している日本において、農業は今後ますます注目が集まることが予想されます。外国産の野菜への不安も高まる中、国産のブランド力が上がることも期待され、農業に将来性を見出してこれからはじめようという方も多いのではないでしょうか。
また、お子さんや家族に安心安全なものを食べてもらいたいという思いで、家庭菜園に挑戦される方もいらっしゃるでしょう。
快適な農業ライフを送るためにも、農機具選びはとても大切です。とはいっても、初めて農機具を選ぶときには、どれを選べばよいのかわからないですよね。
そんな農業初心者の方も、安心してください。難しく思える専門の機械も、ポイントを押さえて考えることで、きっと最適なものが選べるはずです。
目次
畑を耕す機械には、大きく分けてトラクターと耕運機の2種類があります。それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
トラクターとは牽引(けんいん)自動車のことで、人の力では動かせないような大きな物を動かすときに使われる自動車です。土木工事用のトラクターもありますが、単に「トラクター」というときは、畑を耕すときに使う「農業用トラクター」を指すことがほとんどでしょう。
トラクターには人が乗って運転し、広大な面積を一気に耕していくことができます。また、馬力によっては粘土質の土壌も少ない労力で耕すことができます。
アタッチメントを変えることで土壌づくりだけでなく、肥料の散布や草刈りなどもできるため、本格的な農業には欠かせない機械だといえるでしょう。
耕運機とは田んぼや畑の土を耕す機械です。耕運機は手押しして使う小さな機械で、トラクターに比べるとはるかに馬力は劣ります。しかし、それでも人の手で耕すよりは数倍早くきれいに仕上げられるでしょう。
最近では、少ない力で簡単に操作できるような耕運機も多く販売されています。これから家庭菜園をはじめる女性や農業未経験の方でも利用しやすいのではないでしょうか。
トラクターと耕運機、それぞれの特徴がわかったところで、どの農機具を選べばよいか実際に使用する状況をふまえて考えていきましょう。
まず、はじめに考えてほしいのが、畑や土地の面積です。小さな家庭菜園なら小型の耕運機で十分かもしれません。しかし、広大な土地でおこなう本格的な農業なら、トラクターや大型の耕運機が必要になってくるでしょう。
つぎに重要なのが、どんな作物を育てるかです。これは今すぐ育てる作物のことだけでなく、来年、5年後、10年後のことまで計画に入れて考えることが必要になってきます。
育てる作物によって必要な農機具も違ってくるので、長く使い続けることを想定して選ぶとよいでしょう。
田んぼや畑に使う土地の性質や状況を知ることは、最適な農機具選びにも繋がります。土の状態ひとつとっても耕すのに必要な機具は変わってくるほか、雑草の種類によって適した草刈り機械の刃のタイプも違ってきます。
また、農地の回りの環境を考慮することも大切なポイントでしょう。民家が隣接している場所で大型の農機具を使えば、騒音トラブルにもなりかねません。そうした場合は、なるべくうるさくない農機具を選ぶことで不要なトラブルを避けましょう。
長く使用することを考えれば、故障時のサポートの充実度も大切でしょう。万が一農耕具が壊れてしまったときは、素人ではなかなか対応できないものです。サポート体制の整った会社での購入をおすすめします。
本格的な農業をする上で、トラクターは大きな役割を担ってくれます。だからこそ、しっかりとポイントを押さえて選ぶことが大切といえるでしょう。
トラクターを何に使うのか、どんな作物を育てるのか、できるだけ具体的に考えることで、おのずとどのトラクターを選べばよいか見えてくるのではないでしょうか。トラクターは目的別にアタッチメントを変えて、動作のしかたを変えることができます。
たとえば畑の土を耕したいのならば、ロータリーと呼ばれる、爪で土を掘り起こすアタッチメントが最適です。さらに深く掘って土をひっくり返すならディスクロータリー、薬剤散布にはブームスプレーヤー、といった具合に必要なアタッチメントはさまざまです。
「今は野菜だけだけど、将来的にはお米も作りたいからこのアタッチメントも必要になるだろう」というように、先のことまで考えて決めていくべきでしょう。
トラクターの値段は、馬力に比例して上がります。馬力の低いものを選べば、値段は抑えられるかもしれません。だからといって、安さばかりを追求して、耕作する土地に合わないトラクターを使用することはおすすめできません。
低い馬力のものを無理に使用すると、エンストを起こしてしまうおそれがあるからです。故障の原因にもなりかねないので、土地に合わせた馬力のものを選びましょう。
柔らかい土であれば20馬力もあれば十分でしょうが、粘土質の土なら30馬力は確保していただきたいところです。使用するアタッチメントによっても必要な馬力が変わってくるので、その点も考慮する必要があるでしょう。
アタッチメントの取り付け方法には、2点リンクと3点リンクがあります。左右のロアリンクだけにアタッチメントを取りつけるのが2点リンク、左右のロアリンクと真ん中のトップリンクにも取りつけられるのが3点リンクです。
今後畑を拡張していく予定があるのなら、アタッチメントの幅が広がる3点リンクが可能なトラクターを購入するとよいでしょう。
農地の面積や育てる作物に加え、さらに適した耕運機を選ぶために知っておくとよいポイントをいくつか説明していきます。
農地に隣接する民家がある場合や、住宅街での家庭菜園をお考えの方なら、耕運機を使用する際の騒音に注意が必要です。
電気式のものを選べば、ガソリン式に比べ音を小さく抑えられるでしょう。ただし電気式は電源コードを繋いで使用するので、広い土地ではコードが届かないこともあります。自分の畑で電力の確保ができるか確認しましょう。
騒音の心配がない環境で、30坪以上の畑を耕す場合におすすめなのが、ガソリン式の耕運機です。電力確保の心配もありませんし、電気式に比べ馬力が強いので、広い土地でも活躍してくれるでしょう。
自宅から離れた場所に畑がある場合など、耕運機を持ち運ぶ可能性がある場合は運搬できるサイズかも確認しておきましょう。
耕運機をはじめて使用する場合は、あまり重すぎるものだと扱いに苦戦するかもしれません。できるだけ本体が軽く、安定したものを選ぶとよいでしょう。
耕運機は小型のものでも数万円、大型になると数十万円から数百万円を超える高価なものもあり、そうそう買い替えられるものではありません。長く使うためには、月に1回程度のメンテナンスをおこなうことが大切になってきます。
メンテナンスと聞いてわずらわしく感じる方もいるかもしれません。しかし、タイヤ部分に挟まった土を洗い流すだけでも故障や破損のリスクを下げられるので、愛着を持ってきれいに保つことを心がけるとよいかもしれません。
機械いじりが好きで、細部まで自分で触ってみたいと思う方もいるでしょう。しかし、素人が分解するのは危険です。メンテナンスをするつもりが、大切な基盤を破損してしまったり、元どおりに組み立て直せなくなってしまったりなどという事態になりかねないのです。
また機械の不調をそのままにしておくことも、思わぬ事故にも繋がりかねません。安心して長く使うためにも半年か1年おきにプロの業者に検査してもらいましょう。
農耕具は用途に合ったものを選ぶことで、作業効率を格段に上げることができます。高価なものではありますが、長い目で見ればそれだけの価値があるのではないでしょうか。
農耕具は定期的に土を落としたりなどの簡単な作業で長持ちさせることができます。きちんとお手入れをして大切に扱いましょう。また、より長く活躍してもらうためにも、普段のお手入れに加えて、半年か1年おきにプロのメンテナンスを受けることをおすすめします。